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日常に“WOW!!(驚き)”がある静岡へ。未来の子どもたちが誇れる街を創る。

株式会社VELTEXスポーツエンタープライズ
代表取締役社長 松永 康太

更新日:2023年8月23日

静岡市立高校卒業後、インテリア・建築関連の専門学校であるICSカレッジオブアーツに入学。在学中にヨーロッパへ渡航し、各国で建築および料理を学ぶ。帰国後、当時サントリーホールディングス傘下の株式会社ミュープランニングアンドオペレーターズ(現:株式会社MYU)に入社。海外における飲食業態の店舗を中心とした建築デザイン・ディレクション業務に携わる。2015年、医療法人社団アールアンドオーに入社。新規事業開発に従事し、静岡県内で初となるニュークックチル(新調理方式)を導入した、病院給食のセントラルキッチンの立ち上げを行う。2016年、株式会社R&Oフードカンパニー(現:株式会社LIFEAT.)を設立し、代表取締役社長に就任。2018年、株式会社VELTEXスポーツエンタープライズを設立し、静岡初のプロバスケットボールチーム「ベルテックス静岡」を創設。2社の代表を現任し、医療・食・スポーツを通じた地域活性化の取り組みに力を注いでいる。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

静岡初の男子プロバスケットボールチーム「ベルテックス静岡」。

私が代表を務めるVELTEXスポーツエンタープライズは、男子プロバスケットボールチーム「ベルテックス静岡」の運営会社です。

静岡市をホームタウンとするベルテックス静岡は、日本の男子プロバスケットボールリーグである「B.LEAGUE(Bリーグ)」を目指して、2018年に誕生した静岡初の男子プロバスケットボールチーム。2019年9月にBリーグ3部(B3)に参入し、創設4年目となる2022-23シーズンに、悲願のB2昇格を果たしました。

クラブの創設に関わることになったのは、ベルテックス静岡の前身である静岡エスアカデミア・スポーツクラブの代表理事・山崎氏との出会いがきっかけです。2018年1月のことでした。

当時の私は、東京から静岡に戻って4年目。医療法人を経営する父からのオファーで立ち上げた、病院給食を製造する新会社(株式会社LIFEAT.)の事業がようやく軌道に乗り始めた頃でしたね。「静岡にプロチームを作りたい」という予期せぬ相談に少し戸惑いながらも、出会った翌月にはBリーグ観戦に出かけていたんです。

それからすぐに事業の構想を練り始めて、運営会社を設立。2018年9月に発足式を実施し、チーム名とロゴを発表しました。そして19年3月にB3参入が正式承認され、8月にはプレシーズンゲーム(前哨戦)に参戦。怒涛のスピードで、静岡初の男子プロバスケットボールチームが誕生しました。

静岡を離れて得た視点。自分の生まれた街で経験を役立てたい。

静岡に戻る以前に私が築いてきたキャリアは、実はスポーツビジネスとはまったく異なるものです。専門学校時代は、渡航先のヨーロッパで建築や料理などに深く触れました。もっとも興味を惹かれたのは、街の熱気や、そこで暮らす人々の人生を楽しむ姿。中でも、スペインで過ごした日々は、仕事や人生に対する自身の価値観に、今も大きな影響を与えています。

帰国後は、海外プロジェクトを手がけられる企業に就職。飲食をはじめとした店舗や商業施設の空間設計、プロデュースを行う仕事に携わり、街づくりの一端を担う中で、街を変えていくクリエイティブのダイナミズムを幾度と目にしました。

30歳のとき、これまでオファーをくれていた父からの申し出を受け入れ、長く身を置いた東京を離れる決心をしました。理由は、それまでの経験をもとに「自分の生まれた街で、日本、世界に誇れる何かを創れたら」という純粋な気持ちだったと思います。

そして静岡で事業を立ち上げる経験を経て、山崎氏からクラブ創設のお話を受けたときには、強い想いが芽生えていました。静岡をもっと良くしたい、50年先も子どもたちが誇れる街にしたい。クラブ創設はそのきっかけになるかもしれないと思えたのです。

みんなが楽しめる「お祭り/FES」を、地域の新しいカルチャーへ。

ベルテックス静岡のホームアリーナである静岡市中央体育館にはバスケットファンだけでなく、老若男女さまざまな方が足を運んでくださいます。レジャーとして楽しむ家族連れ、デート中のカップル、スポーツ観戦全般が好きな方・・・性別や年齢を超えて地域の方々が集まり、ひとつになれるのがベルテックス静岡のホームゲームです。

音楽が鳴り響く会場で、声援や手拍子をリードするアリーナMC。工夫を凝らしたイベントやダンス、観客と一緒に盛り上がるハーフタイムショー。巨大フラッグを掲げて走り回るチームスタッフとともに、観客がウェーブを作るインターバル。そして、バスケットボール関係なく、地域で活動している多種多様な団体のお披露目の場。

私たちはこの演出を「お祭り/FES」と表現しています。よく他のチームと違うといわれますが、誰もが心から楽しめるものを突き詰め、たどり着いたのが「お祭り/FES」でした。

静岡県には、県全体が一体となる大きなお祭りは、年に一度もないと思っています。だからこそ、私たちは「お祭り/FES」を当たり前のものにしたいと考えています。心から楽しめるものがあれば、地域の人々は心身ともに健やかに過ごせるでしょう。それを特別な日だけではなく、日常の中に創っていきたいのです。

クラブ創設からまだ数年ですが、数え切れないほどの紆余曲折を経て、ようやくB2昇格を実現しました。お祝いのパレードでは、昇格の安堵と達成感で涙が止まりませんでしたが、2,000人以上のファンや地元住民の方々で埋めつくされた市街地を進みながら感じていたのは、私たちが目指している「お祭り/FES」の原型のようなものが、地域の新しいカルチャーとして芽吹き始めた手ごたえのようなものだったと思います。

50年先を見据えた街づくりに向けて、重要な第二章が始まる。

B2昇格の目標達成とともに、ベルテックス静岡の第一章は幕を閉じました。第二章はベルテックス静岡らしさ、ひいては静岡らしいカルチャーを築き上げる重要な時期と位置づけ、クラブの域を超えるような興行や事業を展開していく予定です。

2023-24シーズンの行動指針は、「WOW !! 静岡に、未だ見ぬ驚きを」。私たちのビジョンである「スポーツで、日本一ワクワクする街へ。」の実現に向けた取り組みを推し進めるために、第二章では静岡に未だない、大小さまざまなWOW!!(驚き)を提案し、生み出し続けていきます。

そして、先ほど紹介した私の経歴ですが、医療(健康)・食・スポーツ・クリエイティブと一見バラバラのように見えますが、これらの経験こそ資産だと思っています。ホームゲームの演出やチーム運営が固定概念にとらわれないのは、スポーツ以外の視点があるからこそ。それがベルテックス静岡の個性となっていくはずです。

さらに付け加えると、50年先を見据えた街づくりをしていくためには、バスケットボールの枠に捉われる必要もないと考えています。もちろん、ベルテックス静岡、そしてバスケットボールが一丁目一番地であることが最重要事項であることに変わりはありませんが、新アリーナを含めて、もっと高い視座で新しい仕掛けをクリエイティブしていけたら面白いですよね。

子どもから大人まで、心の底から全身ではしゃげるような「何か」を提案し、日常をワクワクで満たしていきたいと思っています。

全力で「バカ」になって、一緒にWOW!! を創り出しましょう。

当社にはさまざまなバックグラウンドをもったスタッフがいます。実は、バスケット経験者が多いわけでもありません。共通しているのは、だれかを喜ばせるために本気になれるところ。全力で「バカ」になれる人たちです。多様な価値観を受け入れ、変化を楽しめる人の集まりだと思っています。

私たちが取り組む課題は壮大です。正解もありません。だからこそ、人生の軸となるような原体験がある方や、地域を良くしたいという強い意志がある方にとっては、打ち込む価値のある仕事だと思います。

スポーツで、日本一ワクワクする街へ。このビジョンを実現するために、私たちは全身全霊を注いで挑戦しています。「自分にも、何かできることがあるんじゃないか」と本気で思える方を、仲間としてお迎えしたいですね。

この街に大小さまざまなWOW!!を生み出していく、大切な第二章をともに走りましょう。

編集後記

チーフコンサルタント
原口 翼

静岡を拠点に活動するプロバスケットチーム「ベルテックス静岡」を運営するVELTEXスポーツエンタープライズの松永社長に、地方の課題解決に向けた取り組みや地域におけるプロスポーツチームの在り方についてお話を伺いました。

松永社長は、バスケットチームそのものよりも、むしろ地域の活性化についての 話題が中心で、地域課題や今後の取り組みについて、まだ記事には載せられないお話もたくさんありました。

人口の減少や高齢化、地域環境の変化など、静岡経済が抱える問題は多岐にわたっています。こうした課題に対し、「地域×スポーツ×他産業」を掛けあわせたオープンイノベーションで解決を図っていくというお話を伺い、これこそがスポーツを核とした地域活性化だと感じました。

松永社長のお話から、ベルテックス静岡は静岡のプロスポーツチーム以上の存在として、地域の課題解決や活性化に取り組んでいることが窺えました。この継続的な取り組みによって、静岡全体の発展が促進されることを期待しつつ、私も全力で応援したいと思います!

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